◆美容皮膚科部門
シミ
シミ、と一概にいっても、その中には本当に表面だけの問題で治療の比較的かんたんな物から、ほくろ・アザにちかくて治療に 1年前後かかるものまでいろいろなものが存在・混在しているため、専門医による適切な診断と、治療が必要です。
皮膚表層の色素を追い出すトレチノインと、皮膚深層の色素を破壊するレーザーの組み合わせにより、特に顔面部を中心に殆どの色素性疾患は治療が可能になりました。
●トレチノイン治療
東大病院の吉村講師が日本で始めてこの治療を始められ、軟膏の精製法・シミ治療方法論を確立されました。トレチノインは本来脂溶性のものですが、これをあえて水溶性のゲルに強制的にとかし、皮膚に塗ってやる事で皮膚上で濃度が高まり通常のクリーム基材のものより効果が高いのです。
皮膚の色は多くは表皮にあるメラニンという色素の量で決まってきます。このメラニンは基底層にある確率で存在するメラニンを産生する細胞、メラノサイトが定期的に生みだすのですが、黒人・白人間でもメラノサイトの量は余り差がなく、産生されるメラニンの量が圧倒的に違い、色の差となって現れるとされています。表在性のシミは何らかの形でこのメラニンが表皮・角質にたまってしまったり、メラノサイトが何かの影響で活性化されてメラニン産生を増やす為に起こるわけです。トレチノインはビタミンAの仲間で、外用剤として皮膚にぬると、皮膚表皮の一番奥にある基底層の細胞に働いて、この分裂を活発にします。この結果、通常28日といわれている表皮の入れ替わる周期を最短半分ぐらいにまで早める事ができます。ここでハイドロキノンなどの漂白剤を併用し、メラノサイトのこれ以上メラニンを作るなという指令を同時に与えてやる事により、通常の老人性の色素斑(あまりに角質が厚かったり手や足のものはまずはレーザーでこの角質を飛ばしてやる必要があるときがあります)や、ソバカス、扁平母斑、肝斑など皮膚表皮の表在性疾患ではシミを取り去る、薄くすると言う事ができるわけです(肝斑などはホルモンの影響によりメラノサイトが常に活性化されている状態ですから、レーザー・フォトフェイシャルなんかをうってしまうと、強い光のしげきでさらにメラノサイトが活性化されメラニンを産生して逆に悪化してしまいます。このため肝斑はこのトレチノインの治療が基本となります)。ですから、日焼けや、単に色を白くしたい日と、なんとなくくすみを取りたい人、乳輪の黒ずみ(これも表皮のメラニンが色の原因)を薄くしたい人にも向いています。ただ、強制的に代謝を早めてメラニンの排出を促しますので、治療を開始してから数日から一週間ぐらいの時に少し炎症を起こして赤くなったり、皮がぽろぽろとむけたりといった状態になります。逆に多少この症状が出ないと色素が出て行かないので、多少辛いのですが、日焼け止めをしっかりと使っていただきお化粧で赤み等をごまかしてください。トレチノインは二ヶ月治療をして一ヶ月休むという三ヶ月が一クールとして治療の目安ですが、シミにより、これを繰り返したり途中でレーザーの力を借りて治療を進めていきます。トレチノイン治療中は反応が弱すぎれば効果がないので、濃い濃度のものに変えないといけませんし、強すぎたり自己判断で急にやめたりすると、逆に先ほどのメラノサイトを活性化して色がついてしまう事がありますので、特にはじめの二ヶ月は二週間に一度の通院がとても重要です。料金は範囲が狭ければこの一クールで4−5万円(はじめに初診料・薬代に3万円がかかります)、範囲が広く、保湿などをよりしっかりしたほうが良いと判断される場合には7−8万円(はじめに初診料・薬代に4-5万円)かかります。
トレチノインは表皮の成長をはやめるのでケミカルピールの効果も併せ持ちます。慣れてくれば自宅でできること、また、真皮にも働いて長期でみると真皮も厚くなり、肌にはりが出るなど若返り効果がある事、三−四週間つかうと皮脂腺にも直接作用して油がでにくくなる事から、ニキビの治療や小じわの治療にも用いられます。また、深いピーリングやアブレージョンのプレ・アフタートリートメントとして用いると、傷の治る期間を早めたり、ピーリング・アブレージョン・そのほかのレーザー術後の色素沈着を取り去ってくれます。
さらにビタミンAは摂取しすぎると動物実験では奇形児が生まれたというほうこくがあります。皮膚に塗る程度では血中濃度は殆ど上昇せず、もともとからだの中にあるものなので問題ないとは思いますが、一応トレチノインの治療期間中は避妊をしていただいています。
●レーザー治療
表皮の疾患でも角質が厚くなっており、先ほどの薬が入っていかないと判断される場合や、主に真皮に色素の存在するアザにちかい色素性疾患、大田母斑・伊藤母斑や表皮と真皮の両方に色素の存在する後天性真皮メラノサイトーシスや肝斑・炎症後色素沈着(タオルによるこすりすぎやアトピー性皮膚炎後の色素沈着)のなかでも経過が長くてメラニンが表皮の基底膜を破って真皮の方にまで落っこちてしまっているもの、などは本格的な治療はレーザーの力を借りないと治療は不可能です。ただ、日本人の大きい問題として、レーザーによりそのシミが取れたとしても、そのレーザーが皮膚を通過した事により、先ほどの表皮基底層にいるメラノサイトが活性化してしまって三週間から四週間の後にぼんやりとした黒い色がついてしまう事が多いということです(炎症後色素沈着 PIH と呼ばれています)。この場合には日焼けに気を付けて気長にまっていただくか、先ほどのトレチノインの治療をして表面の色素を追い出してやる事になります。また表皮にメラニンが余りに多く含まれている疾患についても、始めからレーザーをあててしまっては、表面のメラニンにエネルギーをトラップされて真皮まで届かず、何の治療にもならないといった事が起こりえます。逆に角質が厚いものは、はじめにレーザーを使わないと治療がうまくいきません。当院では表面を削る炭酸ガスレーザーやQスイッチヤグレーザー(ソバカスなどには実はロングパルスアレキサンドライトレーザーなどを使う事もあります)を使い分け、様々な色素性疾患を治療できる体制を整えています。
このように、シミ・あざははじめの診断と通院がとても重要です。一番簡単にとれるしみでも、やはりいったん出来てしまったものは通院の上2-3ヶ月はかかりますので、きちんと医療機関にて治療されることをお勧めします。さらに顔以外のところでは皮膚の真皮・表皮の厚みや性状が異なる為に、本当に保湿をしっかりしないとトレチノインは以外と使い方が難ししかったりします。これも医師の指導に従ってください。
また、特に顔以外の扁平母斑(メラノサイト事態がもともと活性化しており再発が多いので、顔面でもトレチノイン、ハイドロキノンでなるべく再発しないようコントロールいくことが大切です)では、Qスイッチ系のレーザー(色素のみを特異的に破壊し、細胞そのものは殆ど影響を与えません。ですから、逆に瘢痕にならないわけです)では治療が難しい事もあります。その場合にはロングパルス(レーザーを当て続ける時間が長く細胞を破壊します。逆に少し瘢痕になる可能性はあります)サンドライトレーザー、炭酸ガスレーザー(要するに表皮を削り取ってしまう)をもちいたりします。ただ、それでも対応しきれないと考えられる場合にはショートパルス(Qスイッチとロングパルスのあいのこです)のレーザーを持っている施設(通常私自身の医局の関係で東大病院)を紹介する事にしています。